■■―さっぱりわからん召喚師学入門―■■ 〜異種族との対話編[前編]〜
   

   しゅ‐ぞく【種族/種属】
   1 動物や植物で、同じ部類に属するもの。
   2 同一言語・同質の文化を共有する比較的小さな民族的集団。部族。
   3 天文学で、星を場所・年齢・HR図などの違いにより分類したもの。
   

   ―…『エルフは温和で平和的な種族』なんていい加減なことを言ったのは、
    一体全体どこのどいつですか!?
    喉元に剣を突きつけられ、背中に冷や汗をかきながら悪態をつく。とはいえ、
   口に出したらそのまま刺されかねない勢いなので、当然心の中でだけだが。
   

   「ダークエルフが、一体里に何の用だっ。」
    僕の喉元に剣を突きつけ、敵意を剥き出しにしながら警備兵が尋問する。
   中立地帯では睨まれただけだったので、里に入った瞬間尋問にあうとは想像
   していなかった。完璧に油断していたというやつだ。
   

   …まぁ、エルフと深い因縁があるダークエルフが訪れれば警戒されるのが当
   然で、単に僕が考え足らずだったという線のほうが正しい気がしないでもない
   のだが、あえてそこは考えないようにする。真実が必ずしも人を幸せにする
   とは限らないっていうやつだ、うん。
   

    「あの〜、えっと…別にこれといって深い用事はあるような…ないような…」
   

   



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   しどろもどろに口を濁す。ところで、この喉元にチラつく剣の先端と、警備兵が
   僕を睨みつける眼光は一体どっちが鋭いのだろうか。
   

   「…用事もないのに里へ訪れたのか、ふざけるな!ここは貴様らのような穢れ
   た一族が軽々と足を踏み入れていい場所ではない。即刻立ち去れ!」
    素直に本当のことを言うべきか判断に迷ったので思わず言葉を濁したが、
   それが思いっきり失敗だったことを警備兵の表情と言葉から確認する。休戦
   協定を結んでいるとはいえ、やっぱり本拠地ともいえる里に軽々しく足を踏み
   入れるには無理があったか。
   

   ―まさかここまで来て門前払いをくらう羽目になるとは…どうしようかな。
    折角ここまで足を運んだのに、目的を達せられないままはいそうですかと引
   き下がるのも割に合わない。とはいえこの状況では長引くと命に関わるしなぁ
   …などと考えていると、警備兵に向かって里の中から声がかけられた。
   

   「あの〜、警備兵さん。その人は私の連れなんです。」
    まだ幼さが残る女性の声。その言葉に警備兵が振り向き…2秒ほど経過
   してから視線をやや下に向ける。警備兵の視線の先には、可愛らしい小さな
   女の子が立っていた。僕の3分の2ほどしかない少女は、茶色い光沢を放つ
   防具を身に纏いながら、やや遠慮がちな表情で警備兵を見つめている。
   

   ―………誰? 
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